梅干しができるまで



【開花】みつばちは大切なパートナー
< 2月:開花・受粉 >
他に先駆けていち早く花を咲かせる梅、紀州各地の梅林には、毎年多くの観梅客が訪れ、春の訪れを喜びます。
一方、生産農家ではこうした賑わいをよそに結実の準備が進められます。梅は自家受粉ができません。
そこで効率よく受粉ができるよう利用されるのがミツバチです。
晴れて暖かい穏やかな日、ミツバチは花から花へと活発に飛び周り梅の受粉を手助けします。

【青梅】厳しい気候に耐えながら
< 4月:幼果 >
こうして受粉した梅は、やがて結実し小さな実をつけます。しかしこの時期はまだまだ寒さが厳しい季節、梅は寒害や霜害など厳しい気候に耐えながらも、幼い果実を成長させていきます。
< 6月:青梅 >
6月に入り梅雨にはいると、梅は雨の恵みをうけて実を大きくふくらませはじめ、青果用の青梅はこの頃の梅を手でもいで収穫されます。
梅干し用の梅はさらに時をおき、黄色く完熟し自然に落下するのを待って収穫することで、柔らかくフルーティーな梅干し原料となります。

【取り入れ】完熟梅をネットで効率よく収穫
< 6月中旬~7月中旬:梅干し用完熟梅の収穫 >
気候が安定する春以降、梅は実をどんどん大きく成長させます。
しかし昨今の異常気象の影響でこの時期に季節はずれの寒波や台風の襲来などで梅に傷がつき、直接作柄や品質に影響を与えることも多く、育成を見守る農家にとっては気が抜けない季節でもあります。
そうして無事に大きく育ち、完熟して黄色く色づいた梅は、ようやく収穫の時を迎えます。
< ネットの上での拾い梅作業 >
収穫の方法は“拾い梅“といって樹の下にネットを敷き、完熟して落下した梅を受け止め、それを拾い集めるのが、ここ紀州では一般的、 手でもぎ取る他の果物とは違い、風などの影響で一日の収穫量にも幅があり、時には作業が深夜にも及ぶことがありますが、このときばかりは家族総出で作業にあたります。
< 収穫された完熟梅 >
ちょうどこの頃は雨の多い時期、しかしこうした過酷な労働条件の中でも、一粒ひとつぶ丁寧に収穫されます。
収穫された梅は、黄色く完熟したやわらかく、まさに熟れきった梅となりますので、 時を置かず各農家で洗浄・選別され梅干しへと漬け込まれます。

【洗浄・選別】収穫後すぐにおこなう作業
< 梅の洗浄選別作業 >
収穫された梅はたっぷりの流水で水洗いされ、梅のサイズごとの6種類の穴があいた選別機でサイズごとに選別されます。
梅は天日干しの際、干し上げるタイミングを揃えるために同じ大きさの梅ごとに漬け込まれます。
< 浸水工程 >
洗浄・選別された梅は虫を除去するため、水のはいったタンクに30分間浸されます。

【漬込み】漬込みは約1ヶ月間
< 塩漬け作業 >
選別・水洗いされた梅はたっぷりの塩をふりかけられ漬け込み槽に漬込まれます。この際に使われる塩はミネラル豊富な天然海水塩が多くの農家で利用されるようになってきており、 その梅干は塩かどが少なくまろやかな味へと仕上がります。
< 梅酢の中で熟成される梅 >
こうして漬込まれた梅は、2~3日するとやがて実の中の水分を出します。それが梅酢となって梅はその中に漬かり約1ヶ月をかけて熟成されていきます。
梅を漬ける際の重石は柔らかい梅を潰さない用、様子を見ながら重石の量を調整します。またポンプで梅酢を循環させて漬込みタンク内の塩分と酸度の値を均一化する作業など、毎日様子を見守る作業が続きます。

【土用干し】真夏の太陽の下で行う梅干し
< 8月:漬け上げられたばかりの梅 >
梅雨が明けた7月下旬頃から、梅酢の中で熟成された梅は、やさしく引き上げられ天日干し用の”梅ざら”と呼ばれるトレイに並べられます。
引き上げられたばかりの梅はまだ黄色くさわやかな梅の香りがします。
< 天日干し作業 >
真夏の太陽のもとで行われる天日干しは紀州の夏の風物詩、付近を通りかかっただけで甘酸っぱい香りが漂ってきます。
土用干しともよばれる梅干し作業は梅の実全体にまんべんなく日光を当てなければなりません。
そこで毎日、朝露の残る時間に一粒ひとつぶ人の手で梅をひっくり返す“返し”という作業を行います。

【土用干し】真夏の太陽の下で行う梅干し
< 柔らかく干し上がった梅干し >
選三日三晩かけて天日干しされた梅は塩をふき、茶色く色が変わり皆さんご存知の梅干しとなっていきます。
< 樽詰め >
干しあがった梅はそのまま倉庫に取り込まれ温度を下げてからサイズ・品質ごとにわけられ、専用の樽に詰め保存・熟成されます。
これが「白干梅」と呼ばれる昔ながらのすっぱくしょっぱい梅干しで、この状態のまま何年も保存することができます。この白干梅をつかって食べやすく減塩の美味しい紀州梅干に仕上げていきます。




【せん定】冬に行う不可欠な ”せん定” 作業


土用干し作業が終わると、農家では休む間もなく来年の収穫に向けた準備に取り掛かります。なかでも冬に行う枝の“せん定”は重要な作業です。不要な技などを整理することによって 健全な生有を促し、豊かな収穫量を確保します。
このほか土壌づくりや病害虫の防除など、さまざまな作業を行い、そしてまた次の開花を迎えます。

紀州の梅干造りは収穫が1年に1度、梅の実の自然落下にあわせて短い期間に行われることもあって、この時期に人の手がかかる作業が集中し、1ヶ所での大量生産が難しいのですが、ここ紀州では昔からの地域伝承の産業としての高品質な梅干造りの技術が各農家に行き渡っており、原料となる「白干梅」造りを農家に委託、分散できるところが、産地の中心で完熟した南高梅を取り扱えることと併せて、他の地域では真似のできない、紀州ならではの地場産業となっております。

【仕入・検品】等級・サイズごとに品質をチェック
< 仕入れ検品 >
生産農家で天日干しされた梅干しは仕入れ担当によってサイズ・等級ごとに品質チェックされ仕入れられます。
紀州梅干の等級は最高級のA級から傷などがあるB級、C級、規格外の梅干しまで多岐にわたります。細かくチェックすることでお客様に安定した品質の製品をお届けできるよう気を使う工程です。
< 保存倉庫 >
仕入れした白干し梅は等級・サイズごとにわけて保管します。保存に使う梅樽には生産者ラベルを貼って管理。この原料を使って1年を通して食べやすい調味梅干しを製造しています。
製品に利用した空き樽は農家へと戻される容器再利用システムが構築されエコロジーに貢献しています。

【洗浄・選別】 入念に水洗いし、脱塩槽で余計な塩分を除去
< 洗浄・選別工程 >
梅干はいよいよ製品化に向けて工場での最終的な加工へと移ります。最初の工程は洗浄・選別です。梅干は太陽のもとで干され自然にさらされているため、まずは入念に水洗いし、不純物などが取り除かれます。
そして果実が破れているものや、変色しているものなど規格に合わない梅干も選別されます。
このように一粒ひとつぶ熟練した作業員の厳しい目によってチェックされ合格した梅干だけが製品に加工され市場に送り出されるのです。
< 脱塩工程 >
こうして丁寧に洗浄、選別された梅干しは脱塩槽に入れられ1時間以上かけてゆっくりと余分な塩分が取り除かれます。

【漬込み】漬込みタンク室で調味液に漬込み
< 調味漬込み工程 >
洗浄・選別された梅干は漬込みタンク室で調味液に漬込まれ、低塩調味されます。
調味液はかつお節のまろやかな旨味と梅の酸味がバランスよく調和した人気商品の田舎漬やはちみつ梅など中田食品オリジナルのもので梅干本来の自然の風味を生かして 味付けされます。漬込み期間は約10日間、こうして梅の実は新たな味と出合い、さらに美味しい梅干へと生まれ変わります。
< 液切り工程 >
味付けされた梅干しは調味液から引き上げられ、約3時間かけて入念に液切りされます。

【品質検査】厳格な規格値にあわせて検査
< 品質検査 >
製品の規格値である塩度・酸度・pH・Brixはもちろん、熟練の作業員による味覚検査もおこなっています。
また漬込みタンクごと、細菌の検査もおこない厳格な品質チェックの後、パック詰め工程へと移されます。

【包装・出荷】 最新の生産設備と手作業をうまくミックスして
< パック詰め工程 >
いよいよ製品となる最終工程です。
計量・包装工程では田舎漬ラインをはじめ、梅かつおライン、ギフト商品用ライン、カップ詰めラインなどを設置。
それぞれコンピュータ制御による自動計量・充填機をはじめ、ベルトコンベアー、自動包装機械など、 最新の生産設備・機器を導入し効率化を図っています。しかしすべてを機械に任せているわけではありません。特に南高梅は果皮が柔らかく破れやすいため銘柄によっては人の手で一粒ひとつぶ丁寧に箱詰めする作業も平行して行っており、機械化と手作業をうまくミックスさせたフレキシブルな生産ラインを構築、少量多品種に対応できる生産体制を整えています。


< 金探・ウエイトチェッカー >
パック詰めされた梅干しは異物混入と内容量を確認するため、金属探知機、ウエイトチェッカーに通されてから製品ラベルを貼付されます。


< 検品・梱包工程 >
賞味期限が記載されたラベルを貼付された製品は、再度、一つひとつ人の手によって確認され箱詰め梱包されます。


< 出荷作業 >
梱包された商品は、出荷伝票をはられ全国各地へと出荷されていきます。

【品質管理・環境保全】万全の品質管理と環境保護に取り組む
< 品質管理・環境保 >
中田食品では加工や梱包の工程で梅干の品質や、不純物が紛れ込まないよう生産ラインでは常に厳しいチェックを行っています。
そしてさらにより衛生面で安全性の高い生産環境をつくるために、漬込みタンク室、加工室、包装室の空気をオゾン殺菌する空気清浄化装置を導入し、また各ラインに金属探知機を設置するなど、万全の品質管理体制を整えています。
このほか工場内には 周辺の環境を守るために1日250トンの排水を浄化する大型の処理施設を設置し、 そこで発生した沈殿汚泥は醗酵堆肥化された肥料にリサイクルするなど、環境対策にも力を注いでいます。
また本社の梅園には南高梅をはじめとする17種類の梅を植樹し、いつでも梅と語り合える空間を設けています。
人や自然への優しさ―中田食品の梅干造りには、こうした思いやりの心が息づいているのです。